倫理リーダーを育てる(7)◉経験から考える

これからは、5つの領域(+α)を深堀して考えていきます。
まずはじめは「経験」からはじめます。
経験から考える
最初の領域「経験」は、十分な情報に基づいた判断を下すための、過去の成功と失敗に基づいています。実際の倫理問題に対処するために、初めは“経験こそが唯一の方法”だと思うのですが、実はそれは意思決定の車輪のひとつにに過ぎないことがわかります。
私たちは、自分の過去の経験を活かし、どんな問題でも倫理的な解決策を決めることができるのです。ただ思い出せないことの方が残念ながら多いのかもしれません。学生時代や社会に出たての頃、もっと昔やもっと新しいことでも、私たちは色々な場面の人間関係で、上手くいったことだったり失敗したという経験を持っています。
実はこの積み重ねが、良くも悪くもいまの私たちの判断の基盤を作っています。
どこかの時点で踏み越えてしまった一線のまま、現在に至っている、そんなことはないでしょうか? あの時別の選択をしていたらどうなっていたでしょう?
経験が良い判断につながることも、或いは経験が間違った判断をさせてしまうこともあります。
経験は私たちの過去の判断として記憶されています。でもその経験は、その場面でその環境でその人たちとの関係から行ったものであり、いま起こっている問題にどれだけ適応性があるのでしょうか?
人は同じだったり近い状況の物事に囚われる傾向があります。違いや少ない事例に注意を払わない傾向があります。いま起こっている問題と全く同じ事例であるわけがありません。過去の経験と現在を照らし、どのくらいどの部分が似通っているのか、違っているのかを精査し、同じであっても見えない違いとしてどんなことがあり得るかを、可能な限り考えることが肝要です(続く)