倫理リーダーを育てる(15)◉COVID-19後に考えなければならないこと
#15
◉COVID-19後に考えなければならないこと
先日、HBRにこんな内容のレポートがあったのでご紹介する。
第二次世界大戦中米国戦略諜報局(CIA)が、枢軸国(アルバニア,ブルガリア,フィンランド,ドイツ,ハンガリー,イタリア (のち連合国側に参加) ,日本,ルーマニア,スロバキア,スペイン,タイの諸国)の中枢にエージェントを潜入させ、枢軸国の国力を低下させるために「シンプル・サボタージュ・フィールド・マニュアル」を作成した”。といった内容だ。
どんな内容かをこのマニュアルの一部から抜粋すると…
- 「会議では長いスピーチを頻繁に行え。自分の言いたいポイントを説明するのに、個人的な経験や逸話をたくさん盛り込め」
- 「さして重要でない業務は、完璧に行うように要求せよ」
- 「重要な仕事がたくさんあるときに限って、会議を行え」
- 「会議の議事録や通信文は、些細な言葉づかいまでチェックして訂正させること」
他にもこんなものがある、
- 何事も手順に従って行うことを求める。決定を早めるために近道をすることをけっして許さない。
- 可能な限り、すべての問題を委員会に委ねて、さらなる調査と検討を行う。委員会の人数はできるだけ多く、最低でも5人にする。
- 前回の会議で決定された事項を参照し、その決定の妥当性について再検討を試みる
…等々だ。“これらは今日の大部分の組織が採用している、「標準業務手順!」と勘違いされても無理はない”。
プロセスは成果を上げ、リスクを最小限に抑えるのに役立つはずだ。しかし、それを重視しすぎると、競争力、成長、生産性、そして従業員のモラルが損なわれる。
… と記載されている。
詳しく、このレポートの原文を見てみると、従業員向けにも作成されていることが分かる。
- 「電話の受付では、間違った内線番号につないで時間を長引かせ、『誤って』切ってしまえ」
- 「最もらしい理由をつけてペーパーワークを増やし、ファイルの数を増やせ」
- 「指示の意味が理解できなかったふりをして、何度も聞き直せ」
- 「重要な書類を間違ったファイルに保存せよ」
- 「自分のスキルや経験は、新人に教えるな」
目を疑いたくなるが、これ現在の組織の至る所で、いや、正に現在の霞ヶ関で行われていることではないのか?
COVID-19はコロナウイルス以外に様々な物事を、この地球上私たちの生活にもたらしているが、特にこれから経済活動の立て直しの中心として、会社組織の役割は言わずもがな大きい。
だからこそ、リモート会議などその他のITCを駆使する従来業務の自動化や効率化は、図っていかなければならない。そしてそのためには、従来のオペレーションを新しいITCシステムでそのまま利用しようとしても無理なものが多い。リモート会議もやってみると色々と問題点が指摘されていくる。でもそれは当然のことだ。
会議やコミュニケーションのやり方や在り方自体を再考し、本来の会議の「パーパス(目的)」は何か?どのような状態が望ましいのか、そのためにはどの様な手段があるのか?といった事柄を、従来の社会通念をゼロベースで考え再考する必要がある。そしてこれこそが巷に言われている「DX」の本当の意味だ。ツールとしてデジタル化、DXを推進することではない。
従来のパラダイムを次代のオペレーションに適する形へとレビューし、全体を再構築することがだ。
その変革のために、どの様なリーダーが求められるのか?
「変革期に求められるリーダーの条件.. 」といったタイトルのセミナーをよく見かける。でも誰も経験したことのない世界を現状の中から創りあげることは、どんなリーダーでも容易ではない。
ではどうすればできるのか?
「先のことは分からない。でも日々目標を立て、そのゴールを達成することはできる」とは、以前の上司孫正義の言葉だ。山も登らなければ次に登る山は見えない。いま先が見えないのであれば、過去の経験や通念(当たり前)を排除・再考し、先が見えるまで繰り返して行くしかない。
(続く)