迅速な意思決定&オペレーションのために #2
「アジャイル」というキーワードは、2000年あたりから、徐々にソフトウェア開発の手法として広まった。従来主流だったウォーターフォール型の開発では、工程の全てを「企画」「設計」「実装」「テスト」に分割した上で開発を進めて行くため、全体を踏まえての機能開発が求められ、このため多くのプロセスと時間が必要となる。一方アジャイル型開発では、先ほどの「企画」「設計」「実装」「テスト」といったプロセスを、機能別に行うことで迅速性を図ると共に、顧客と開発者との思いを、常に確認・共有しながら開発できるため、認識の齟齬も少ない。
このアジャイル手法は、現在では商品開発をはじめ、サービスや制度の構築など、多くの領域で導入展開されており、コロナ後の新しい仕組み作りを、いち早く提示し実現させるために、迅速なオペレーションが求められています。ソフトウェア開発に端を発したアジャイルな思想は、迅速に成果を出するための組織開発として、破壊的(ディスラプティブ)な技術や制度などが議論されはじめた2017年頃から、欧米を中心に各方面で論じられている。
このアジャイルをコンセプトとする「アジャイル型組織」は、COVID-19以降のキートレンドとして、欧米のコンサル会社もこぞってそのデリバリーに余念がない。
2045年に起こると言われた「シンギュラリティー」は、コンピュータの能力が人間の脳を超越し、いわゆる電脳社会として生まれ変わるとするコンセプトだ。自分も含め大方の意見は「起きるとしても先のこと、そうなることもあるかもしれない」程度に思っているだけだ。しかし、共有できるだけのイメージと具体性がないため、SF事としてしかとらえないのかもしれない。
しかしながら、今回のアジャイル型組社会や組織へのトレンドは、アフターコロナの先鋒として検討していかなければならない。何故なら、環境の急速な変化に対応するためにも、そして既にアジャイル化を実践する競合に負けないためにも、避けては通れないと考えるからだ。
いま、コロナがもたらす変化が問われているが、コロナとは関係なくコロナ以前から大きな変化が起こっていたことを忘れてはいないだろうか?。スピード、範囲、規模、そしてそれらが業界を超えてシンクロする、ビジネス環境の変化だ。前回(#1)の変化点のスパンが短くなっている様に、ITやAI、そしてネットワークによる加速度的な技術革新は、社会インフラとしての変化も生み出している。
そしてその変化の波は絶えることなく、破壊的な技術変革を伴って押し寄せてくる。教育におけるディスタンスラーニングや機械による学習教育、IoT(モノのinternet)がもたらすリアルタイムな状況&情報の入手、AIを取り入れた高度な生産設備が生み出す高可用&高生産体制。勿論人の代わりに働きはじめた多種多様なロボットもある。
そしてこれらデジタル化の加速により、社会システムを筆頭に、状況の見える化と共有、業界を超えたコミュニケーションとコラボレーションが複雑に発生し、それは必要となる情報量自体が爆発的に増加することを意味している。
つまり、従来とは異なる速度と量と領域で同時多発的に変化が起こっており、ビジネスの全てのオペレーションスピードを早めなければ立ち行かなくなる。このことにいち早く気づき、具体的な行動に移しているのが欧米の先進企業だ。だがその道のりは長く、行動に移しているが、未だ確たるゴールに至っているところは少ない。しかしこれは、うまく行かなかった、行っていない多くの企業の事例を併せ持つことで、時系列にうまく行く確度が高まると考えられる。従来の枠組みの中での小さな改善を目指しているのでは無いからこそ、そこに難しさがある。屋根へのショットではなく、月へのショット(MoonShot)とOKRの中では言われている。OKRとはObject Key Resultをいい、KGIやKPIといったマネジメントツールのひとつだ。
そしてそのための基盤がデジタル・テクノロジーだ。AIとITなのでAITと言ってもよいだろう。情報の流れの形や蓄積する情報の安全性や正確性などを考慮し、社会、業界、組織、個人に最適であるための全体構想「アーキテクチャ」のデザインが求められ、そこには最新のテクノロジーとそれらが及ぼすリスクを踏まえたガバナンス(=デジタル・ガバナンス)が、車の両輪として必要になってくる。