倫理リーダーを育てる(13)◉リーダーとマネジャーの違い

#13

リーダーとマネジャーの違い

倫理的リーダーシップのコンセプトはこのリーダーシップをどのように理解するか、そしてなぜ組織のトップに倫理的なコーチ・リーダーを置く必要があるのかを明らかにし、決定し、実証することにあります。映画「34丁目の奇跡」では、おもちゃ売り場のマネージャーがサンタクロースに、子供が欲しがっていなくてもおもちゃを押し付ける方法を教えていました。このマネージャーは、人々のニーズではなく、数字を見ていたのです。

このケースでは、マネージャーは数字を達成するために非倫理的な行動をとっていました。しかし、倫理的なリーダーは、すべての人のニーズを考慮し、倫理的な組織の成功に向けて従業員を発奮させたり、励ましたりする方法を知っています。

倫理の話をするときに、「エシカル・マネージャー」という言葉を使う人はいません。しかし、企業が失敗したときには、「エシカル・リーダーシップ」という言葉が使われています。多くの人は「マネージャー」と「リーダー」という言葉の意味が似ていると思っています。

しかし、この2つの言葉はいずれも組織における役割を表す言葉ですが、その示す内容は全く違います。

  • マネジャー:日々の業務や人々を管理・監督する
  • リーダー :ビジョンや目標を打ち出し、達成するために人々を奮い立たせ導くこと

である、というのがその違いです。

レン・マレーラの著書に次のような質問が記されていました。

“どうしたら人々の価値観やモラルを向上させることができますか?” 

“これは難しい質問で、確かに私は唯一の答えを持っていません。私たち一人ひとりがそれぞれの方法で貢献できると思います。
まず、私たち一人ひとりが自分の責任範囲内で、本当の自分になる勇気を持つことが必要です。
何か良いことや正しいことのために立ち、自分の行動を、自分が信じていると公言している価値観と結びつける必要があります。
別の言い方をすれば、自分の行動を、自分が言っていることや信じていることと同じにするのです(言行一致)。道徳的な良心に基づく行動一つで、私たちの影響力の及ぶ範囲の流れを変えることができます。”

米国空軍士官学校には、士官候補生が嘘や不正、窃盗の誘惑に打ち勝つために存在する名誉規定があります。
実際、その名誉規定は、士官候補生が毎日必ずその前を通る“名誉規定の壁”に、誰もが遵守できるように刻まれています。その名誉規定はこうです。

“我々は嘘をつかず、盗みもせず、騙しもせず、そのような者を許容しない”

士官学校では、過去にはこのコードの4つの部分、つまり、嘘をつくこと、不正をすること、盗むこと、そして、これらのことをする人を容認すること、すべてに関わるスキャンダルがあったそうです。しかし、これらのことが明るみに出ると、有罪になった人は罰せられます。また、名誉規定は、すべての士官候補生が役員になっても守られ、より良いリーダーになるための指針となることが期待されています。でも実際にはそうではなく、個人が規範に従うよりも、違反する方が簡単だと考えた時に破綻が生じます。しかし、この名誉規定は、空軍士官を最低限の行動基準に結びつける接着剤となっているのです。

私たちは皆、自分の人生を維持するために、最低限の行動基準と倫理観を持つべきだと言えるでしょう。でも現在これらの倫理観が急速に個人主義に転換し、守るべき基準領域が侵食されています。

小さな綻びを関係者で隠蔽したことで、更に成長した問題を組織ぐるみで無かったことにする。まして人が自ら命を絶たりすることなど、あってはならないのです。テレビドラマの連続殺人事件ではありませんが、一つの罪を隠すために、次々と新たな罪を重ねていくことは、ドラマの中だけにしたいものです。

ビジネス上の、そして国家レベルのモラルが高いほど、書類作成の手間が省けるのです。頬が引きつることのない真の笑顔が増え、市場に信頼が生まれることから、経済活動の歯車がうまく回るようになることでしょう(続く)