人前で話す素晴らしい秘訣(TED@クリス・アンダーソン)

TEDのキュレーターでありTEDプラットフォームの開発者の1人、クリスアンダーソンがこの秘密を共有します。以下は、そのキーセンテンスの要約です(TEDは、主に「TEDトーク」(世界中の視聴者にオンラインで無料で提供されるショートトーク)を通じて、貴重なアイデアを共有することを目的とした非営利団体です。)

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TEDプレゼンの必勝法みたいなものがあると思っている人がいます。「丸い赤絨毯の上で話す」「子供時代の逸話を語る」「個人的な秘密を打ち明ける」「奮い立たせられるような行動喚起で締めくくる」。いいえ。それはTEDトークの考え方ではありません。そういった小道具を使いすぎると、ありきたりとか感情操作的と取られるのがオチです。でも、すべての優れたTEDトークに共通するものが1つあります、それが何かお教えしましょう。

それと言うのも、私はこれまで12年以上の間何百人もの素晴らしいTED講演者たちの話を最前列で聞いてきたからです。彼らが本番に向け準備するのを手伝いながら、優れたTEDトークを生む秘訣を彼らから直接学びました。それぞれの人やその話す内容はまったく違って見えても、実はひとつの共通する重要な要素があります。

それは何か?。講演者のすべきことは何よりも、聴衆の頭の中へ特別な贈り物奇妙だけど美しい「アイデア」という贈り物を届けることなんです。

アイデアとはそもそも何なのでしょうか?。それは世界を理解し舵取りしていく上で役立つ情報のパターンだと考えるといいでしょう。アイデアは人間の文化を形作る最も強い力なんです。講演者の何よりの仕事は「聴衆の頭の中にアイデアを構築すること」だと、もし認めてもらえるなら、それに取り組む上で従うべき4つの指針を お教えします。

1.スピーチの主要なアイデアを1つに絞ること

アイデアは複雑なものです。自分が最も強い想いを抱くアイデアを1つに集中し、その1つをきちんと説明できるよう、内容を切り詰める必要があります。背景が分かるようにし、例を挙げアイデアを鮮明に描き出す。選んだ1つのアイデアが、スピーチ全体を貫く根幹となり、話すことのすべてがそこに繋がるようにしましょう。

2.聞く人に関心を持つべき理由を与えること

聴衆の頭の中に何かを作り始める前に、まず中に入れてもらう必要があります。そのための道具は何だと思いますか?。

それは好奇心です。聴衆の好奇心を掻き立てましょう。惹き付けられる挑発的な問いを使い、今あるものがなぜ道理に合わず、説明がいるのかを明らかにしましょう。世界観の中にある穴に気付かせてやれば、相手はその穴を埋めたいと感じます。その欲求が引き起こされたなら、こちらのアイデアを組み上げてやるのはずっと楽になります。

3.聴衆が既に理解している概念を使って1歩1歩アイデアを築いていくこと

聴衆の頭の中に既にある概念を関連づけるために、言葉の力を使いましょう。ただし自分のではなく相手の言葉を使います。聴衆のいる地点から始めるのです。講演者は自分が日々使っている用語や概念の多くが、聴衆には全然馴染みがないことを忘れがちです。

パーツがどう組み上がるか示す上で、比喩が重要な役割を果たします。望むパターンの形を、聞き手が理解しているアイデアを使って示すことができるからです。たとえばジェニファー・カーンはこんな風に…

CRISPRというバイオテクノロジーのものすごい新技術を説明しました。「DNAのためのワープロが初めてできたようなものです。CRISPRを使うと、すごく簡単に遺伝情報のカット&ペーストができるんです!」

このような鮮やかな説明が頭の中へ はまり込んだときに、満足感を伴うひらめきの瞬間をもたらします。だから、自分のスピーチを信頼できる友人に聞いてもらい、分かりにくい部分を見つけることが大事です。

4. 最後の指針は、自分のアイデアを みんなに知らせる価値のあるものにすること

そのためには、「そのアイデアで恩恵を受けるのは誰か?」と自問することです。この問いには 正直に答える必要があります。

そのアイデアが、自分や自分の組織にしか役立たないなら、悪いですがみんなに知らせる価値は多分ありません。聴衆はすぐ見抜きます。

でも、もしそのアイデアに誰かの心を明るくするとか、誰かの考え方を良い方に変えるとか、物事のやり方を変えるよう促す力があると思うなら、その人たちや、その他すべての人への贈り物となる素晴らしいスピーチの素材を手にしているのです。

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