倫理リーダーを育てる(27)◉権力に負けないために
#27
◉権力に負けないために
3つ目は「権力」です。
最近はどうか定かではありませんが、一昔前の米国ビジネス界における不祥事の多くが、経営者がその地位と権力を乱用したことに起因していると言われています。
残念ながら、多くの人にとって権力を持つことは、塩水を飲むようなもので、飲めば飲むほど、のどが渇く。つまり、塩水を飲むことによる止まることのない喉の渇きは権力と同じで、手に入れればさらに多くの権力が欲しくなるという例えだ。
別の逸話として「Yertle王・症候群」がある。Yertleは目に見えるものすべてを支配するカメの王様で、すべての臣下に自分を頂点とする塔に自分を積み上げるように命じて王国を拡大します。しかし、最後にはすべてが崩壊してしまいます。
特に権力の影響を受けやすい人は、以下のパターンを繰り返し経験するケースが多いと、J.C.MAXWELLは言及しています。
- パワーの受容:パワーそのものは、お金と同じようにニュートラルなものです。良いことにも悪いことにも使える道具です。しかし、特に早く簡単に成功を収めてしまう人や、準備ができていないうちに権力を受け取ってしまう人にとっては、危険なものです。若手の経営者や初めての社長が、よく失敗する ”勘違い” の一つです。
- 権力の乱用:権力が危険なのは、権力を託された人がその保持を第一に考え始めることです。ビジネス、政府、閣僚、人間関係など、自分に与えられた力は、奉仕のために与えられたものであることを理解していません。何としても権力を維持したいと考える人は、権力を維持するために標準的な倫理行動を損なう可能性が高いのです。こちらも大いなる思い上がり勘違いなのですが、そこには多くの人の思いやお金が注ぎ込まれています。勘違いではとても済まされたものではありません。
- 権力の喪失:権力を乱用する人は、必然的に権力を失います。権力を乱用するCEOは、独裁者と同様に、時間の制約を受けて生きているのです。つまり、いずれはその権力から退かなければなりません。永遠の権力などなく、あくまでも一時的なものなのです。でも一旦権力を手中に収めると人は変ってしまうのです。そこに自制心と倫理観がない場合は。
トルーマンは、権力について次のように言及しています。
「人は一時的なものだという認識で権力を受け入れるなら大丈夫です。しかし自分が権力の源だと思うとき、それこそが破滅につながる。」 自分の権力を守りすぎていることに気づいた人は、倫理違反がないかどうか、自分自身を調べ始めたほうがいい。権力というのは非常に魅力的なものだ、とも言っています。
権力を盾にした人間で、幸せな最後を纏った人の記憶がないのは、小説においてもまた現実の世界においても、破滅への道を進むしかないからであろうか(つづく)