「ハードな選択の時代へ」

先日NHKの番組で、ランディ・ザッカーバーグ(facebookのマーク・ザッカーバーグの実姉)は、これからの企業の目的と在り方についてこんなことを言っています。
 
 「企業の使命と株価の問題で苦渋の選択を何度も迫られました。率直にいうと私たちは資本主義の世界に生きているので、収入がなければ誰も支援できません。自分が大切にしている理念やステークホルダー、自分の従業員でさえも支援できません.. 」
 
企業倫理はとても大切です。でもそのために利益が出せなくなったら、元も子もありません。いま流行り(失礼!)の「パーパス」を明確に定め、実践することは多くの組織や企業にとってとても重要です。
 
まして、COVID-19以降のこの端境期にあっては、利益の出し方、オペレーション、顧客&マーケティング、そして求めるHRや組織開発など、従来の企業の在り方に根本からのレビュー(再考すること)が求められていると思っています。
 
日本では、SDGsが叫ばれ大企業を中心に個別の展開が行われている昨今ですが、本当に求められているSDGsやESGとは何なのでしょう?
 
今回のパンデミックのような危機下では新たな問題がたくさん生まれます。利益を得ながら問題を解決することを企業の在り方(パーパス)とする企業にとって、この状況は新たなリスクが数多く生まれますが、これらを問題解決することで価値を生み出し、リスクをチャンスとすることができます。それはまさしくこのコロナ禍で、成功した多くの企業が実践したことです。
 
日本でも知られている「ダノン」社のCEOは、企業の存在意義を明確に定めて実践してきたが、解任を余儀なくされました。その理由は業績不振によるものだとされています。アクティビストであるヘッジファンド等がCEOの交代を求めたことによるものです。
 
この例は、“企業は存在できなければ意味がない” という、明確な意思が現れたものだということができるでしょう。
 
先のザッカーバーグも、
 「第一に企業は世界に貢献するためにも生き残り、損益について考え、ときには厳しい決断を下す必要があります。これも全て他のやりたいこと(目的?)を実現するためです。
 私が支援しているどの企業も常にこのような議論をしています。境界線はどこにあるのか? 世界への貢献と健全なビジネスとの境どこにあるのか?…」と問いかけています。
 
つまりは、お金だと、利益無くしては何もできないのだと。そしてその上で、生み出された利益を用いて、環境やその他数多の社会的問題を解決していくことが、求められる形ではないかと。
 
オックスフォード大学教授のコリン・メイヤーは、企業の在り方と役割について以下の発言をしています。
 
 「企業が守らなければならない唯一の規範は、人間や地球に問題をもたらすことからは、利益を得ないということです。それさえ守れば、どんなパーパスでも選べます。それがなんであれ利益のある解決策を生むことにつながります。“問題を解決することで利益を上げる”、それこそが望まれることなのです。
 
収益性が高く社会や環境問題に対する優れた解決策を編み出すように競争を促進し、企業が選ぶパーパスが可能な限り多種多様であることを奨励したいのです。資本主義は倫理なしには機能しません.. 」(ここでいう倫理とは、“問題解決を目指す自身のパーパスを把握し、忠実に取り組んでそれを達成すること” と定義しています)
 
「利益第一主義から、利益を出して問題を解決する」への転換が求められていると言っています。
 
だとすると、利益を出すいのは企業であり、問題の解決をも企業がリードすることになり、国や政府はどのような関与を行うことになるのでしょうか?
 
新・資本主義を唱える政党は、どこまで考えを巡らせているのでしょう。