Eテレ:パンデミックが変える世界 ◆ジャック・アタリEテレ:パンデミックが変える世界 ◆ジャック・アタリ

このパンデミックは私たちに何を警告しているのでしょうか?

多くのことです衛星社会の透明性そしてパンデミックの警告を世界で共有するルール作りの重要性についてです。

パリではこのこんなにどう対処していますか?

フランスは規律を守る中央集権型の国家で、政府が一度決定をすれば皆最善を尽くします。もちろんとても困難な状況ではありますが、日本やフランスでも多くの人たちが今もなお任務に就いていることに感謝したいと思います。医療や食料品流通メディアなど、仕事をしている大勢の人が家の外に働きに出ています。彼らは私たちの歳が生き延びる上で絶対的に必要な仕事を担っています。また社会階級や社会的要求の違いによっては混乱を生じます。都市が封鎖されて家に閉じ込められても、裕福な人は家にいればよいでしょう。しかし狭い場所に詰め込まれる人にとっては、困難が伴います。

「今世界を襲っている危機を乗り越えることほど緊急の課題は無い。もし国家がこの悲劇をコントロールできなければ、市場と民主主義という2つのメカニズムは崩壊してしまうだろう。」

経済学者であるあなたから見て、世界経済に与える打撃はどれほど深刻になると思いますか?

最悪の事態を避けるためには、最悪を予想する方が良いと思います。私たちは1929年(大恐慌)行こう最悪の危機に陥っており、2008年(金融危機)と比べてもはるかに深刻です。世界経済の損失はGDP20%に及びかもしれません。プラス1%とかマイナス1%ではなく。もちろんこれは世界経済の最も重要な牽引力の一つであるアメリカが、ほとんど備えなしに、この危機的自体に突入していることお明らかに関係しています。この損失は決して少なくはすまないでしょう。もちろん各国の政府は状況を改善するために、中央銀行による金融政策、思い切った財政など、できることはすでにすべてやっています。うまく行っているかどうかはともかく、世界中で多くの支援が行われていることは確かです。ただしそれは、結果を先延ばしにしているに過ぎません。レストラン、ホテル、店舗、スタジアムや航空業界など、人々が集まることが予想される業種は、とても大きな影響、10%などではなく60%、あるいはそれ以上の影響を受けるでしょう。

とても恐ろしい見通しです。あなたはさらに第2波、第3波にも備えるよう警告されています。

この状況はあとどれくらい続くのでしょうか?

私は医者ではないのでそれはわかりません。ただ、過去の例を見るとパンデミックの最初の波が、封じ込めや都市封鎖によってうまく収束したときに、外出して感染するという間違いを多くの人が犯しています。1918年のヨーロッパでは、スペイン風と呼ばれた伝染病が蔓延しました。

第1波で既に多くの犠牲者を出しましたが、外出するタイミングが早すぎて、第2波ではさらに多くの犠牲者を出してしまいました。

私たちは医者でもなければ、未来を占うこともできません。ですがコロナ後の世界はどうなっているのでしょうか? 最悪のシナリオとは?

最悪のシナリオは世界的な恐慌、失業、インフレ、ポピュリストによる政府の誕生、そして長期不況による暗黒時代の到来です。そうならないとは思いますが、最悪のシナリオが起こるとすれば、さっき言ったように早く外出しすぎて、第2波に遭遇し経済に打撃を受けると言うことでしょう。

他にも非常に悪いシナリオが起こります。新しいテクノロジーを使って国民の管理を強める独裁主義の増加です。例えば中央ヨーロッパでハンガリーなどの政府がしたようにパンデミックを独裁主義に向かうための口実にするのです。それが1つの脅威です。さらに経済健康そして民主主義への脅威もあります。

緊急事態が民主主義に与えるインパクトについてお尋ねします。緊急時にはたとえ民主的な指導者であっても、前例のない権力を手に入れることがあり、大衆も厳しい政策し支持することがあります。それは民主主義にとってどのような意味を持つのでしょうか。

確かに安全か自由かと言う選択肢があれば、人は必ず自由ではなく安全を選びます。それは強い政府が必要とされることを意味します。しかし強い政府と民主主義は両立し得るものです。第二次世界大戦の最中のイギリスが良い例です。強力な政府を持ちながら、民主主義でもありました。

このパンデミック中で差別や分断が以前より目立ってきているのではと懸念しています。同意できますか?

はい、連帯のルールが破られる危険性が極めて高い、つまり利己主義です。経済的な孤立主義が高まる危険もあります。他の国に依存しすぎるべきでないと言うのは一面の事実です。例えばどうかエチオピアにマスクを売ってくれ、と中国などに懇願しなくても済むように。しかしだからといって、国境を閉ざしてしまうべきではありません。私たちはもっとバランスのとれた連帯を必要としているのです。

Altruism(利他主義=「合理的利己主義」)

「パンデミックという深刻な危機に直面した今こそ、「他者のために生きる」という人間の本質に立ち返らねばならない。協力は競争よりも価値あがり、人類は一つであることを理解すべきだ。利他主義という理想への転換こそが、人類のサバイバルの鍵である。」

be Positive! 利他主義と並ぶキーワード

ーあなたのブログをずっと読んでいますが、その一貫した楽観主義が印象に残りました。例えば「生命万歳!」とか、「ポジティブに考えて生きよう」とか、そのポジティビズムや楽観主義はどこからくるのですか?

オプティミズムとポジティビズムは違う! 例えば観客として試合を見ながら「自分のチームが勝ちそうだな」と考えるのは楽観主義です。一方オプティミズム、自らが試合に参加し、「上手くできればこの試合に勝てる!」と考えることです。そういう意味では私はポジティブであると言えるでしょう。私は人類全てがこの試合に勝てると考えています。自分たちの安全のために最善を尽くし、世界規模で経済を変革させていくことができれば、きっと勝てるでしょう。いまの状況は、私が「ポジティブ経済」と呼ぶものに向かうとても良いチャンスだと思っています。ポジティブ経済とは、長期的な視野に立ち、私が命の産業と呼ぶものに重点を置く経済です。生きるために必要な 食料 医療 教育 文化 情報 研究 改革、デジタルなどの産業です。生きるのに本当に必要なものに集中することです。

共感と利他主義について語っておられますが、人々がパニックになって買い占めを行ったり国境を封鎖したりする中で、利他主義とはどのような意味を持つのでしょうか? あなたのことを「無私の聖人」のように言う人もいるのでは

いえいえ、利他主義は合理的利己主義にほかなりません。自らが感染の脅威にさらされないためには、他人の感染を確実に防ぐ必要があります。利他的であることは、ひいては自分の利益になるのです。また、他の国々が感染していいないことも自国に利益になります。例えば、日本の場合も世界の国々が栄えていれば市場が拡大し、長期的に見ると国益につながりますよね。

利他主義とは他者の利益のために全てを犠牲にすることではなく、他者を守ることこそが我が身を守ることであり、家族 コミュニティ 国 そして人類の利益にもつながるのですね?

そのとうりです。利他主義とは最も合理的で自己中心的な行動なのです。

今回の危機は乗り越えられると思います。薬やワクチンが見つかるかはわかりませんが、数ヶ月の間に打ち勝てるでしょう。医師ではないので何ヶ月かかるかはわかりませんが。ただし、長期的に見ると、このままでは勝利は望めません。経済を全く新しい方向に設定し直す必要があるのです。戦時中の経済では、自動車から爆弾や戦闘機へ、企業は生産を切り替えなければなりません。今回も同じように移行すべきです。ただし、爆弾や武器を生産するのではありません。医療機器、病院、住宅、水、食料などの生産を長期的に行うのです。多くの産業で大規模な転換が求めらます。はたして私たちにできるかわかりません。パンデミックの後、人々が再び以前のような行動様式に戻ってしまうかもしれないから。

「歴史的に見ると、人類は恐怖を感じる時にのみ大きく前進すると以前おっしゃっていました。私たちはまさに今、進化するためにこれまでの行き方を見直すべきと思いますか?

まさしくそう思います。前進するために恐怖や大惨事が必要だということではありません。わたしは破滅的な状況は求めません。むしろ魔法によって今すぐにでもパンデミックが終息して欲しいです。しかし良き方向に進むためには、今の状況をうまく生かす(利用する)しかありません。利他的な経済や社会、つまり私が「ポジティブな社会」「共感のサービス」と呼び方向に向かうために。

しかし、人間は未来について考える力がとても乏しく、また忘れっぽくもあります!。問題を引き起こしている物事を忘れてしまうことも多いのです。過去の負の遺産を嫌うため、それが取り除かれるとこれまで通りの生活に戻ってしまうのです。人類がいま、そのような弱さを持たないように願っています。私たち全員が次の世代の利益を大切にする必要があります。それがカギです!。誰もが親として、消費者として、労働者として、慈善家として、そしてまた一市民として投票を行う時にも、次世代の利益となるよう行動をとることができれば、それが希望となるでしょう。

ありがとう!